正捕手ヒストリー(パシフィック)

正捕手ヒストリー(パシフィック)

優勝チームに名捕手あり

『優勝チームに名捕手あり』という言葉があるが、実際はどれほどの影響があるのか。調べてみると常勝軍団にはやはりいい捕手が確かにいた。執筆当初はノムさんと80年代中期以降のキャッチャーは知識としてあったのだが、それ以外は曖昧どころか初めて知る方々も…。縦割りでチームの歴史、横割りでその世代の顔ぶれを測れるのでぜひチェックしてほしい。

歴代正捕手一覧表

西武 オリックス ソフトB 日ハム ロッテ 楽天 備考
19 若月 甲斐* 清水 田村 堀内 *パ2位
18 若月 甲斐* 鶴岡慎 田村 *パ2位
17 炭谷 若月 甲斐 大野 田村  
16 炭谷 若月 鶴岡慎 大野 田村  
15 炭谷 伊藤光 高谷 大野 田村  
14 炭谷 伊藤光 細川 大野 田村  
13 炭谷 伊藤光 細川 鶴岡慎 里崎  
12 炭谷 伊藤光 細川 鶴岡慎 里崎  
11 炭谷 伊藤光 細川 大野 里崎  
10 細川 日高 田上 鶴岡慎 里崎* *パ3位
09 炭谷 日高 田上 鶴岡慎 里崎  
08 細川 日高 高谷 鶴岡慎 里崎 藤井  
07 細川 日高 田上 高橋信 里崎  
06 細川 日高 山崎勝 高橋信 里崎 藤井  
05 細川 日高 城島 中嶋聡 里崎 藤井 ↑楽天
04 細川 日高 城島 高橋信 橋本 藤井 ↓近鉄
03 細川 日高 城島 高橋信 里崎 的山  
02 伊東 日高 城島 野口 清水将 的山  
01 伊東 日高 城島 野口 清水将 的山  
00 伊東 日高 城島 野口 橋本 礒部  
99 伊東 日高 城島 野口 清水将 的山  
98 伊東 三輪 城島 野口 吉鶴 的山  
97 伊東 三輪 城島 田口 清水将 的山  
96 伊東 高田 吉永 田口 田村藤 古久保  
95 伊東 中嶋聡 吉永 田口 定詰 古久保  
94 伊東 高田 吉永 田村藤 定詰 光山  
93 伊東 高田 吉永 田村藤 青柳 光山  
92 伊東 中嶋聡 吉永 田村藤 青柳 古久保  
91 伊東 中嶋聡 吉永 田村藤 青柳 古久保  
90 伊東 中嶋聡 内田 田村藤 青柳 山下  
89 伊東 中嶋聡 内田 田村藤 福澤 山下  
88 伊東 藤田 吉田博 田村藤 袴田 山下  
87 伊東 藤田 吉田博 田村藤 袴田 山下  
86 伊東 藤田 香川 田村藤 袴田 梨田  
85 伊東 藤田 吉田博 田村藤 袴田 梨田  
84 伊東 藤田 吉田博 大宮 袴田 梨田  
83 大石 中沢 香川 大宮 土肥 梨田  
82 大石 中沢 香川 大宮 袴田 有田  
81 大石 中沢 黒田 大宮 土肥 梨田  
80 吉本 中沢 黒田 加藤俊 高橋博 梨田  
79 野村 中沢 伊藤勲 加藤俊 土肥 梨田  
78 若菜 中沢 黒田 加藤俊 高橋博 有田  
77 若菜 中沢 野村 加藤俊 村上 有田  
76 西沢 中沢 野村 加藤俊 村上 有田  
75 楠城 中沢 野村 高橋博 土肥 有田  
74 片岡 中沢 野村 村井 村上 梨田  
73 宮寺 種茂 野村 加藤俊 村上 梨田  
72 片岡 種茂 野村 加藤俊 醍醐 岩木  
71 村上 岡村 野村 種茂 醍醐 辻佳  
70 宮寺 岡村 野村 種茂 醍醐 辻佳  
69 村上 岡村 野村 鈴木悳 醍醐 岩木  
68 宮寺 岡村 野村 種茂 醍醐 児玉  
67 宮寺 岡村 野村 種茂 醍醐 木村  
66 和田博 岡村 野村 種茂 醍醐 吉沢  
65 和田博 岡村 野村 醍醐 吉沢  
64 和田博 岡村 野村 醍醐 吉沢  
63 和田博 岡村 野村 安藤 谷本 吉沢  
62 和田博 山下 野村 安藤 谷本 吉沢  
61 河合 岡村 野村 安藤 谷本 村田  
60 和田博 山下 野村 山本 谷本 竹下  
59 和田博 山下 野村 安藤 谷本 加藤  
58 和田博 山下 野村 山本 醍醐 (大映*)
57 和田博 山下 野村 山本 醍醐 山田 谷本
56 日比野 山下 野村 山本 加藤 保坂
55 日比野 山下 松井 土井垣 ルイス 谷本
54 日比野 山下 松井 土井垣 ルイス 芳村
53 日比野 伊勢川 松井 鈴木圭 土井垣 根本 上市
52 日比野 山下 筒井 鈴木圭 土井垣 青池 伊勢川
51 日比野 山下 筒井 鈴木圭 土井垣 青池 伊勢川
50 山下 筒井 鈴木圭 土井垣 芳村 伊勢川
              レッカ*
背景黄色はリーグ優勝、背景赤色は日本一
赤文字はベストナイン、太字はGG賞、下線はリーグMVP
● 併用シーズンは試合数、打席数、成績、背景など考慮し1名選出
※72年よりダイヤモンドグラブ賞、86年以降はゴールデングラブ賞
※備考:50-57年は大映スターズ
※最下段、レッカは高橋ユニオンズ(トンボ)の54-56年にかけての正捕手

球団別・捕手考察

パ・リーグはセ・リーグと比較するとやや特殊な状況にあるようだ。まずは指名打者制の影響で、DHで若手のお試し期間や9番に守備型の捕手枠を割くことができるなど捕手育成や起用法まで様々な利点が感じられる。積極的なツープラトン起用もパの方が多いようだ。その辺りにも注目しながら進めていく。

埼玉西武ライオンズ(西鉄・太平洋・クラウン・他)

和田博実〜大石友好〜伊東勤〜細川亨〜炭谷銀仁朗・森友哉

西鉄黄金時代を支えた和田、西武初期に日本一に貢献した大石、西武黄金期を支えた伊東、こちらも2度の日本一(ソフトバンク移籍後も2回)に貢献した細川と一時代を築いた面々が並ぶ。西鉄後期から太平洋・クラウン時代はチーム名に合わせたのかキャッチャーも固定できずにいたようだ。晩年の野村克也、田淵幸一など名選手の在籍もあった。細川以降は炭谷と森の競争期間を経て森友哉がMVPを獲るまでに成長。日本を代表する攻撃型の捕手として期待が高まる。

オリックスバファローズ(阪急・他)

岡村浩二〜中沢伸二〜藤田浩雅・中嶋聡〜日高剛

阪急時代、岡村・種茂・中沢の時期はリーグ優勝や日本一の回数も多くそれぞれがベストナインやダイヤモンドグラブに輝くなど盤石といっていい。その後は藤田と中嶋の争い。強打の藤田、強肩攻守の中嶋といった印象だった。親会社がオリックスに変わってからは日高が正捕手のイメージだが優勝は経験していない。※近鉄に関しては後述

福岡ソフトバンクホークス(ダイエー・南海・他)

野村克也〜香川伸行・吉田博之〜吉永幸一郎〜城島健司〜甲斐拓也

ノムさんに関してはここでは書ききれない。文字通り規格外の捕手。南海後期はドカベン香川と吉田の正捕手争い。優勝には縁がなかったが、スマートで強肩守備型の吉田に対し、ずんぐりむっくりで豪打自慢の香川の構図は実に面白く絵になっただろう。さらに福岡に移転してからはメジャーでも結果を残した城島健司という強肩強打のスーパーキャッチャーが頭角を表し、その前後にも吉永・田上など打撃を得意とする捕手が歴任している。現在の正捕手は育成出身の甲斐が務めるが「甲斐キャノン」と呼ばれる強肩が評価されレギュラーに定着、19年は2桁本塁打を記録するなど打撃面での成長も見られ今後の飛躍が期待される。

北海道日本ハムファイターズ(東映・日拓・他)

加藤俊夫〜大宮龍男・田村藤夫

総勢20名ほどの正捕手がいるように長期固定が珍しい球団。50・60年代ぐらいまでは正捕手固定はもって3年で、70年代にようやく好打者・加藤・パワーのある大宮が登場。そして田村の登場で長らく捕手に困ることはなくなったものの、パの覇権を握るには到らなかった。近年、特に北海道に本拠地を移してからはAクラスの常連となったファイターズであるが長期固定には到っていないように思える。球団の方針なのか木村拓也・小笠原道大・近藤健介など捕手入団の選手が打力を生かしてコンバートされるケースも珍しくない。

千葉ロッテマリーンズ(ロッテ・大毎・他)

土井垣武〜ルイス〜谷本稔・醍醐猛夫〜袴田英利〜里崎智也・橋本将

土井垣・ルイスと「野村以前」の時期の捕手王国。醍醐・谷本の期間を経てロッテ日本一の時のマスクを被ったのは村上公康だ。その後、川崎球場が歓喜に包まれることはなく長期低迷。千葉移転後は併用パターンが主流となる。そんな中、清水、橋本との競争を勝ち抜いた里崎智也は、06年のWBC日本代表に主戦捕手として参加。大会ベストナインに輝いている。

東北楽天ゴールデンイーグルス

藤井彰人〜嶋基宏

楽天の正捕手といえば嶋のイメージがかなり強い。それほど、チームの歴史とともに正捕手の座に君臨し続けていたのが嶋である。2013年は悲願の日本一を達成した嶋も、2020年現在はヤクルトでプレー。楽天はキーパーソンとも言える嶋を放出し新たな時代を築こうとしている。

近鉄バファローズ

梨田昌孝・有田修三〜的山哲也

近鉄の捕手で忘れられないのが『アリナシコンビ』の二人だ。有田修三と梨田昌孝である。「甘いマスクで温厚な恋女房・梨田」と「強気なリードで亭主関白な有田」そんな対照的なイメージが語られている。当時のエース鈴木啓示も我が強い男だったが、意外にも鈴木の目に止まったのは有田。エース御用達となり出場機会を増やした。一方の梨田も球界屈指の強肩であの盗塁王福本がいる時代に盗塁阻止率.500以上を2度残している。また2人ともバッティングもよかったため『正捕手が二人いる』と他球団からのラブコールも毎年のように来ていたとか。

個別比較データ

PLAYERNAME 正捕手 BEST9 GG賞 パ優勝 V回数 MVP Pt
伊東勤 19 10 11 12 6   109
野村克也 23 19 1* 6 2 4回 105
城島健司 9 6 7 3 2 1回 53
細川亨 11 2 2 4 4   39
中沢伸二 10 2 1 4 3   34
梨田昌孝 9 3 4 2 0   29
里崎智也 10 2 2 1 2   25
嶋基宏 11 2 2 1 1   24
岡村浩二 10 1 -- 4 0   24
和田博実 9 0 -- 3 2   22
土井垣武 6* 3 -- 1 1   17
田村藤夫 10 1 1 0 0   14
日比野武 6 0 -- 2 1   14
中嶋聡 6 1 1 1 0   13
村上公康 4 1 1 1 1   13
藤田浩雅 1 1 1 0   12
種茂雅之 7 0 1 1 0   12
加藤俊夫 7 1 1 0 0   11
吉永幸一郎 6 2 0 0 0   10
有田修三 5 0 2 0 0   9
山下和彦 4 1 0 1 0   9
※ポイント(Pt)算出法「正捕手=1p」「B9=2p」「GG=2p」「優勝=3p」「V=2p」「MVP=5p」合計
※「正捕手5以上」かつ「B9+GG賞+優勝」が2以上の選手を抜粋
※「正捕手10未満」の現役選手は除外
※パ・リーグの記録のみ反映
※DG賞・GG賞は1972年以降を対象
※参考までに土井垣は1リーグ時代、大阪タイガースで4年間(46-49年)正捕手を務めている。

「正捕手」「ベストナイン」「ゴールデングラブ」「リーグ優勝」「V回数」「MVP」をポイント化し独自の算出方法でランク付けした。ノムさんの圧勝かと思われたが、西武黄金時代の正捕手・伊東がランクトップ。ノムさんはダイヤモンドグラブ賞創設前の期間で割りを食った格好。この期間の補正を考慮すれば充分トップ圏内だろう。

この企画はとても面白かったので、またいつか、GG補正と打撃タイトルなども加味したポイントでランクをつけてみたいと考えている。